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京極夏彦・多田克己・村上健司『妖怪馬鹿』新潮文庫

完全復刻・妖怪馬鹿 (新潮文庫)
完全復刻・妖怪馬鹿 (新潮文庫) 京極 夏彦 村上 健司 多田 克己

新潮社 2008-07-29
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「妖怪が好きです!」

僕がそう言うと、大抵の人はププッと吹き出した後、決まって次のように聞いてくる。

「妖怪なんているんですか?」

彼ら・彼女らにとって、妖怪は「荒唐無稽なもの」「子どもが面白がるもの」に過ぎないのだ。そんな彼ら・彼女らに僕はやんわりと言う。

「妖怪は、日本社会における一つの文化なんですよ」

これで理解してくれる人もいれば、「だから何?」という表情をする人もいる。ただ、相手がどういう反応をしてこようが、僕はそれ以上深く妖怪について語らない。僕自身、妖怪に関する深い知識があるわけでないし、相手を心から納得させるだけの技術も熱意もないからだ。


一方、『妖怪馬鹿』に登場する御三方は、僕のような妖怪素人とは明らかに違う世界を生きている。知識や熱意だけでなく、根本的におかしなオーラを漂わせている(もちろんイイ意味で)京極夏彦先生・多田克己先生・村上健司先生――どなたも妖怪業界では名の通った方々だ。単に売れっ子だというだけでなく、心底妖怪を愛してやまない変わった方々である。そんな先生方を称して「妖怪馬鹿」――言い得て妙だ。


『妖怪馬鹿』の中では、僕が常日頃考えていることを、三人の先生方が詳しく、面白く、時に脱線しながら語り尽くしている。僕が変な講釈を垂れるよりも、よほど説得力がある(当然!)そんな本書の内容について、僕なりに関心を持った部分を紹介していきたい。


何よりも妖怪研究のすそ野の広さが興味深い。村上先生は、次のように述べている。


「妖怪のことを知ろうとするには、妖怪の本だけ読んでいるだけじゃ駄目なんですね。一見、全然関係ないような資料を読んで行くと、『あっ、これであの妖怪の謎が解けるじゃん!』という発見をすることがある」


「妖怪学」というと特定の研究分野のように考える人がいる。しかし、「妖怪学」の実態は様々な学問分野の総合である。このことを踏まえて、多田先生は「妖怪学=裏博物学」と提唱している。京極先生も、「自然科学の進歩によって博物学が科学に置き換わっていったときに、忘れ去られた部分」を「妖怪学」と定義している。妖怪研究をこのように捉えると、妖怪と我々の生活との密接な結びつきが見えてくる。


たとえば、本書では妖怪とポ●モンの関係について触れられている。そこで京極先生が指摘するのは、妖怪の「キャラクターという面」である。昔の人も雷を自然現象として認識していたのだろうが、その現象をキャラクター化した。ここに「雷様」という妖怪が誕生した。逆に、豆腐小僧は現象不在だが、「キャラクターとして完成している段階から妖怪になっている(京極先生)」。一方、「ポ●モンは妖怪か?」といえば「違う」と京極先生は考える。豆腐小僧とポ●モンとの間には、前者は「歴史や文化の文脈」を引きずっていて、後者は「個人のオリジナルな創作物」にすぎない、という違いがある。そこが、妖怪か否かの分かれ目だというのだ。京極説に従うと、僕達の依って立つ伝統の中にこそ、妖怪が潜んでいる、と言えるだろう。これを読んだ後、僕は自分の身の回りに妖怪を探してしまった(笑)


ただし、妖怪を面白がっているだけではいけない。妖怪が伝統の申し子である以上、人間の負の歴史とも関連するからだ。具体的には、妖怪と差別の問題だ。京極先生は、次にように指摘する。かつて差別されていた人々がいなくなると、そこにできた「空席」にいろんなものが入って妖怪が生まれる。つまり、「差別するという行為自体が妖怪を発生させている」。もっとも、全ての妖怪が差別から生まれたわけではない。京極先生は、続けて述べる。


「妖怪の起源を辿るのに困るのは、先ほど話した『空席』にいろんなものがボコッと入ってしまうということですよ。他の伝承や信仰であったり、あるいは似たような別のものであったり、動物であったり。そうするとまた全然違う『意味のライン』が引っ張り込まれてしまうでしょう」


たとえば、江戸時代の語呂合わせ――単なる語呂合わせから創作された妖怪が、その事実を忘れられて「本物」の妖怪になる。京極先生が指摘する妖怪発生の原理は、このように様々なのだ。差別から生まれた妖怪もいれば、語呂合わせから生まれた妖怪もいる。そうした起源を理解した上で妖怪と付き合わないと、思わぬところで妖怪に足をすくわれるのではないだろうか――僕は少し不安になった。


以上のように、『妖怪馬鹿』を読むと、妖怪についてとても考えさせられる。そのため、妖怪初心者にもオススメの本なのだ。


妖怪初心者は『妖怪入門』のような本を手に取りがちだ。しかし、この手の本は、新書であっても学問的色彩が強く、初心者にはハードルが高い。一方、『妖怪図鑑』の類だと、様々な妖怪の絵や解説が載っていて面白いが体系的ではない。妖怪を通して日本文化を理解する上で『妖怪図鑑』は使いにくい。


一方、『妖怪馬鹿』は対談形式で読みやすい。広範な話題を取り上げているため、妖怪の多様な姿に触れることができる。注釈も充実しているので、一歩踏み込んだ議論まで楽しめる。通読後、「この部分についてもっと知りたいな」と思う箇所がきっと出てくるだろう。そうしたら、その箇所についてより詳しい文献に当たってみると良いだろう。こうして広がっていった知的好奇心の先に、日本文化への真の理解があるのだ。


「妖怪」とは、我々の社会や文化を深く観察するための眼鏡だと思う。「妖怪」という眼鏡をかけて世界を眺めると、今まで見えていなかった側面がくっきりと浮かび上がってくる。怪しげで面白い面もあれば、暴力的で後ろめたい面もあるだろう。しかし、それらに思いを馳せ、時にしっかり考えてみることで、社会の在り方や自分の立ち位置も明確になる。妖怪は僕達を惑わすだけの存在ではない。僕達の進むべき方角に待ち構えていて、優しく導いてくれることもあるのだ。『妖怪馬鹿』は、そのことを実感させてくれる本だった。


「妖怪なんているんですか?」

この言葉に対して、これから僕は次のように応えよう。

「まずは『妖怪馬鹿』を読んでください!」


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[ 2013年11月20日 12:00 ] カテゴリ:好きな本 | TB(0) | CM(2)
プロフィール

みみずく先生@妖怪博士見習い


管理人:みみずく先生@妖怪博士見習い

都内で家庭教師業を営むみみずく先生です。日ごろ、生徒さんや保護者様とお話ししながら、密かに妖怪文化の普及に努めています(笑)

現在、家庭教師業の傍ら、在宅ライターとしてのお仕事もしています。数社から継続して依頼を受けています。ライターとしての更なるスキル向上を目指し、不定期でこちらのブログも更新しています。

妖怪関係の記事や趣味の記事がメインですが、好きな人やお店等も紹介していくつもりです。エログロ・オカルト・アングラ・サブカル等、ちょっと過激な記事も紛れると思いますが、苦手な方はそういう記事を読み飛ばしてください。

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