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電車を一本乗り過ごしても…~べとべとさん駅からすねこすり駅までウォーキングツアー

米子鬼太郎空港では、鬼太郎ファミリーが出迎えてくれる。


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こんなに歓迎されると、鬼太郎たちの姿を写真に収めたくなるのが人間の性。僕は、デジカメでパシャパシャと写真を撮りまくった。

しかも、この日、僕は初めて飛行機に乗った。初めての空の旅。機内の僕は、常に恐怖と隣り合わせだった(と言いつつ、機内で爆睡していたが(笑))恐怖は便意を誘発し、空港に着いた僕の足は自然と厠の方へ……

汚い話は置いといて、とにかく時間がいつの間にか過ぎ去っていたわけだ。

――さて、境港へ行くために電車に乗るか……

そう思って米子空港駅、通称「べとべとさん駅」へ向かった。無人駅。僕と、僕より先に来ていた女の子2人以外、誰もいない。僕は駅の時刻表を見て呆然とした。

――電車が無い!?

境港行きの電車は10分前に出たばかり。次の電車が来るまでには、1時間以上待たなければならない。

――電車が1時間に1本って……

僕の頭は一瞬真っ白になった。が、数分後、思考能力を回復した僕は、「1時間に1本の電車」は珍しくも何ともないことだと気付く。地元・宮城にいた頃も、何度となく「1時間に1本の電車」に泣かされたものだ。その感覚を忘れてしまうとは、僕は完全に東京ボケしていた。平和ボケならぬ東京ボケ。電車は数分おきに来るものだ、という思い込み。僕は、何と愚かだったことか!

そんな僕に、米子鬼太郎空港に取り残されたという事実が重く圧し掛かる。1時間電車を待ち呆けるか?同じく電車を乗り過ごした女の子2人は、「バスでも見てこようか」と言って無人駅を出て行った。完全に一人となった僕に、色あせたべとべとさんが笑いかけてくる。


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※上の写真は、最後の夜に撮影したもの。


1時間以上、一人寂しく電車を待つ気はない。となれば、時間の許す限り歩くのみ!

僕はべとべとさん駅を出て、線路沿いに境港を目指して歩き始めた。


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都会の喧騒からは隔絶した静謐な朝。一面に広がる田んぼと畑。鉄塔がところどころにニュッと聳え立ち、雲を摑もうと手を伸ばしていた。

肌を撫でていく風は冷たかった。秋の風。堆肥のカホリが微かに混ざっていて、鼻孔を刺激した。ここが東京でないことの証しだ。

人の気配が無い。しばらく歩いても、誰ともすれ違わなかった。広大な田園風景を、僕は一人占めしている。贅沢な散歩だ。


更に歩くと、オレンジ色のジャンパーを来たおじいさんが2人、前方に見えた。僕は小走りで2人に近づき、尋ねた。

「境港方面の次の駅までは、何分くらい歩けば着きますか?」

おじいさんたちは怪訝そうに顔を見合わせた後、北の方を指差した。

「中浜駅ならそこにあるよ」

目を凝らしておじいさんの指差す方を見た。確かに無人駅があった。中浜駅だ。

「あっ、本当ですね。じゃあ、その次の駅までは何分くらいですか?」

「高松町駅なら、ここから20分から30分くらいだね。ちょっと遠いよ」

「それくらいなら歩けますね。米子空港駅で、1時間に1本しかない電車を乗り過ごしたので、線路沿いを歩いてみようと思ってるんです」

おじいさん達は、僕の言葉を聞いて笑った。長閑な田舎に迷い込んだ都会モン。そんな僕の姿が可笑しかったのかもしれない。しかし、おじいさん達の笑いに悪意は無い。寧ろ僕の心を和ませてくれる笑顔だった。

ふとおじいさん達の後ろを見ると、鳥居へ続く道があった。

「あそこは?」

「日御碕神社だね」

「じゃあ、神社にお参りしてから更に歩いてみます!」

おじいさん達に別れを告げ、僕は再び歩き始めた。


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先ずは参拝。賽銭箱に5円玉を入れ、手を合わせた。

「妖怪検定上級に合格しますように……」

今回の旅行の目的は、境港妖怪検定上級試験受験。世界にまだ9人しかいない上級妖怪博士。その地位を得るべく、僕は鳥取県境港市の土を踏んだのだ。

――是非とも合格したい!!

そんな壮大な野望を神様は聞き届けてくれるだろうか?たった5円で(笑)

参拝が済んだ後、境内を見て歩いた。初めて訪れる神社では面白いものを見られることが多い。


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先ず驚いたのが、しゃちほこ型の狛犬。お尻を突き出して、頭を低い位置に下げている。大学時代、宗教学の講義で、担当の鈴木岩弓 教授がこのタイプの狛犬に言及されていた。当時は、「そんな狛犬があるんだぁ」程度で聞き流していた。しかし、いざ本物を目の当たりにすると、その特異な姿に目を見張ってしまう。この狛犬は「構え獅子」というそうだ。


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御神輿だ。


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このお二方は一体何者?


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境港市は漁業が盛んということもあり、日御碕神社にも漁に関連するものが納められている。


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僕は日御碕神社を後にして、再び線路沿いを歩き始めた。


中浜駅よりちょっと先を歩いていると、境港行きの子泣き爺電車が僕を追い越して行く。

――1時間に1本じゃなかったの?それとも、時刻表を見間違った!?

走り去る爺の後ろ姿を見送りながら、僕は心にモヤモヤが生じるのを感じた。が、モヤモヤは秋の優しい日差しにかき消された。というか、最早見えなくなった爺を追いかけようとしても無駄。諦めて歩くしかなかった(笑)

高松町駅に向かう途中、寂れた神社を発見。寄會神社だ。時間はたっぷりあるので立ち寄った。


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境内に足を踏み入れる。


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この灯篭に描かれているのは何だろう?


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首を切り落とされた(?)狛犬が怖過ぎる……


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こちらにも立派な構え獅子。


寄會神社を出て、更に歩く。しばらくすると、ようやく次の駅が見えてきた。高松町駅、通称「すねこすり駅」だ。駅の前には高松神社がある。


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神社の境内を近所の方々が清掃していた。僕が境内に入ると、箒を持ったおじさんが「おはようございます!」と大きな声で挨拶してくれた。不意のことに口ごもる僕、情けない……


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ここにも構え獅子。


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何を祀っているのだろう?


高松神社の境内をぐるっと一回りした後は、「すねこすり駅」で電車を待つ。

境港方面からやって来たのは砂かけ婆電車。婆は米子に向かって走って行くのだ。都市伝説のターボばあちゃん顔負けだ(笑)


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砂かけ婆を見送ってから数十分間、僕はベンチに腰掛け、境港に来てから見たこと・感じたことをノートに書き付けた。それは、自分自身を見つめ直すひとときでもあった。ここ最近、時間が無くて、慌ただしい日々を過ごしていた。しかし、「すねこすり駅」では、時間が腐るほどある。というか、ちょっと腐って臭い始めている。いや、この臭いは堆肥のカホリか?(笑)

そもそも時間があったからこそ、「べとべとさん駅」から「すねこすり駅」まで歩いたのだ。知らない土地をゆったり歩く楽しみ。こういう旅も悪くないと思った。

せっかちな人は、旅行に出るとせかせか移動する。まるで巣穴を目指して行進する蟻のように。彼・彼女は、移動途中の風景をじっくり眺めない。だから、思い出には、観光客でごった返した観光地の光景だけが刻まれる。

目的地をひたすら目指す旅が悪いとは言わない。しかし、それだけでは勿体ない、と僕は思う。せっかくの旅なのだから、目的地までの旅程も味わい尽くしたいものだ。それは、「人生」という不案内な道を一歩一歩を踏みしめることと同じではないか?


「すねこすり駅」で僕が物思いに耽っていると、境港行の猫娘・ねずみ男電車が入って来た。



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※これらの写真は、境港駅で撮影したもの。


――これに乗って境港まで行くんだ!


僕は猫娘の懐に飛び込んだ。(了)



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[ 2013年11月02日 07:00 ] カテゴリ:遠方 | TB(0) | CM(0)
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都内で家庭教師業を営むみみずく先生です。日ごろ、生徒さんや保護者様とお話ししながら、密かに妖怪文化の普及に努めています(笑)

現在、家庭教師業の傍ら、在宅ライターとしてのお仕事もしています。数社から継続して依頼を受けています。ライターとしての更なるスキル向上を目指し、不定期でこちらのブログも更新しています。

妖怪関係の記事や趣味の記事がメインですが、好きな人やお店等も紹介していくつもりです。エログロ・オカルト・アングラ・サブカル等、ちょっと過激な記事も紛れると思いますが、苦手な方はそういう記事を読み飛ばしてください。

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